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社会福祉士の倫理綱領と行動規範とは?わかりやすく解説!

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この記事では、社会福祉士が専門職として働くうえで欠かせない「倫理綱領」と「行動規範」について、わかりやすく解説します。

社会福祉士には、「どんな気持ちで人と関わるか」「どんな行動をとるべきか」をまとめたルールがあります。それが、「倫理綱領」と「行動規範」です。

これらは単なるマニュアルではなく、社会福祉士としての“価値観”と“行動の道しるべ”となる大切な指針です。新人の方はもちろん、現場で働く方にとっても今一度立ち返る機会になれば幸いです。

 

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

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倫理綱領とは?

倫理綱領とは、社会福祉士が専門職として守るべき価値観や理念を示したものです。つまり、「どういう思いで支援を行うか」という福祉専門職の“あり方”を示しています。

この倫理綱領は、1995年に日本社会福祉士会によって採択されました。いくつかの改定を経て、2020年6月に現在のものが採択されています。

倫理綱領は「前文」「原理」「倫理基準」によって構成されています。

2020年の改定までは「前文」「価値と原則」「倫理基準」でしたが、改定により「価値と原則」が「原理」へと変わりました。

前文

倫理綱領の前文では、ソーシャルワーク実践の基盤となるものとして「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」が掲げられています。

「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、国際的なソーシャルワーク定義であり、2014年7月に「国際ソーシャルワーカー連盟」と「国際ソーシャルワーク教育学校連盟」が採択したものです。

この倫理綱領は、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」を実践の拠り所としています。

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義 全文

6つの原理

倫理綱領では、以下の6つの原理を定めています。各項目を簡単にまとめました。

  1. 人間の尊厳
     すべての人をかけがえのない存在として尊重する。
  2. 人権
     すべての人の基本的人権を守り、侵害を容認しない。
  3. 社会正義
     差別や抑圧のない、社会正義の実現をめざす。
  4. 集団的責任
     人と環境に働きかけ、互恵的な社会の実現に貢献する。
  5. 多様性の尊重
     社会に存在する多様性を尊重する。
  6. 全人的存在
     すべての人を全人的な存在として認識する。

4つの倫理基準

倫理綱領では、以下の4つの倫理基準を定めています。各項目を簡単にまとめました。

  1. クライエントに対する倫理責任
     クライエントの利益の最優先、説明責任、自己決定の尊重など12項目。
  2. 組織・職場に対する倫理責任
     最良の実践を行う責務、同僚への敬意、倫理的実践の推進など6項目。
  3. 社会に対する倫理責任
     ソーシャルインクルージョン、社会への働きかけなど3項目。
  4. 専門職としての倫理責任
     専門性の向上、信用失墜行為の禁止、社会的信用の保持など8項目。

行動規範とは?

倫理綱領で示された理念や価値観を、実際の支援場面で「どのように行動として実践するか」を具体的に示したものが「行動規範」です。

以下は、主な行動規範の要点です。

クライエントに対する倫理責任

  1. クライエントとの関係
     クライエントとの専門的援助関係を大切にし、自己の利益のために利用しない。
  2. クライエントの利益の最優先
     クライエントの意思を尊重し、その利益の最優先を基本にする。
  3. 受容
     クライエントに対する先入観や偏見を持たず、受容する。
  4. 説明責任
     クライエントが必要とする情報を、わかりやすく提供する。
  5. クライエントの自己決定の尊重
     クライエントの自己決定を尊重して支援する。
  6. 参加の促進
     クライエントの決定や行動に、完全な関与と参加を促進する。
  7. クライエントの意思決定への対応
     クライエントの利益と権利擁護のため、最善の方法で意思決定を支援する。
  8. プライバシーの尊重と秘密の保持
     クライエントのプライバシーを尊重し、秘密を保持する。
  9. 記録の開示
     クライエントから要求があった場合、記録を開示する。
  10. 差別や虐待の禁止
     クライエントに対して差別や虐待を行わない。
  11. 権利擁護
     クライエントの権利を擁護し、権利の行使を促進する。
  12. 情報処理技術の適切な使用
     情報処理技術を適切に使用する。

組織・職場に対する倫理責任

  1. 最良の実践を行う責務
     所属する組織・職場の使命や理念を認識し、最良の実践を行う。
  2. 同僚などへの敬意
     同僚や上司・部下の職責や専門性の違いを尊重し、敬意を払って接する。
  3. 倫理綱領の理解の促進
     同僚や上司・部下の職責や専門性の違いを尊重し、敬意を払って接する。
  4. 倫理的実践の推進
     組織・職場において、倫理綱領に基づいた倫理的実践を推進する。
  5. 組織内アドボカシーの推進
     組織・職場における虐待やハラスメントを認めない。
  6. 組織改革
     人々のニーズや社会の変化に応じて組織・職場の機能をアセスメントし、必要な改革を図る。

社会に対する行動規範

  1. ソーシャル・インクルージョン
     差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、環境破壊などを認識した場合には、専門的な視点と方法で解決に努める。
  2. 社会への働きかけ
     人権と社会正義が守られるよう、人々とともに社会に働きかける。
  3. グローバル社会への働きかけ
     人権と社会正義に関する課題について、グローバル社会に働きかける。

専門職としての倫理責任

  1. 専門性の向上
     最良の実践を行うために必要な資格を所持し、専門性の向上に努める。
  2. 専門職の啓発
     倫理綱領を遵守し、専門職として社会的信用を高めるように努める。
  3. 信用失墜行為の禁止
     専門職としての信用を失墜する行為をしない。
  4. 社会的信用の保持
     専門職としての社会的信用を保持するために必要な働きかけを相互に行う。
  5. 専門職の擁護
     専門職として不当な批判を受けることがあれば、連帯してその立場を擁護する。
  6. 教育・訓練・管理における責務
     専門職として教育・訓練・管理を行う場合、それらを受ける人の専門性の向上に寄与する。
  7. 調査・研究
     調査・研究を行うにあたっては、目的、内容、方法などを明らかにし、クライエントを含む研究対象の不利益にならないように、最大限の倫理的配慮を行う。
  8. 自己管理
     自らが個人的・社会的な困難に直面する可能性があることを自覚し、日頃から心身の健康の増進に努める。

 

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まとめ

社会福祉士の倫理綱領と行動規範は、「どうあるべきか」と「どう行動するか」を示す二本柱です。

日々の実践で迷ったとき、判断に悩んだときこそ、これらに立ち返ることで、より誠実で専門的な支援が可能になります。制度や技術が変化しても、この基本を大切にし続けることが、信頼される社会福祉士の第一歩だといえるでしょう。