キャリアと自己研鑽

社会福祉士が選んだ”弱者”を理解するためのおすすめ本7選

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貧困、障害、病気、孤立、非正規労働――わたしたちが「弱者」と呼ぶ人々は、社会の中でさまざまな困難を抱えています。しかしその一方で、安易に“弱者”という言葉を使うことが、無意識の偏見やラベリングにつながってしまうこともあります。

わたしは社会福祉士として、「社会的に弱い立場」とされる人々と向き合っています。そのなかで感じるのは、「弱さ」は誰にでもあり、状況次第で人は簡単に弱い立場に立たされるということ。そして、真の理解は“上からの支援”ではなく、隣に立ち、一緒に考えることからはじまるということです。

今回は、「弱者とは何か」を考える上で、大きな気づきを与えてくれた7冊の本を紹介します。
社会福祉や教育、看護、地域づくりなど、人と関わる仕事に携わる方はもちろん、現代社会の状況にモヤモヤしている方にもぜひ手に取っていただきたい内容です。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

Xにほぼ毎日投稿しています。

職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

・kindle出版で『 対人援助一年目の教科書: 現役のプロが書いた実践で役立つスキルと心構え』発売しています。

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「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、介護・福祉に関する情報発信をしています。

 

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〈弱さ〉を〈強み〉に 突然複数の障がいをもった僕ができること

突然の発病により複数の障がいを抱えることになった著者が、自身の「弱さ」とどう向き合い、社会とつながり、前に進んでいったのか──本書は、その軌跡を誠実かつ力強く綴った一冊です。

他者の介助なしでは何もできない著者。その「弱さ」を「強み」として再定義する姿勢には、「弱者」が社会で強かに生きるヒントが詰まっています。

また、「合理的配慮」や「共生社会」といった言葉が、単なる理念ではなく「現実としてどう機能するべきか」を考えるきっかけにもなります。障がいをもつ人の視点から見える社会の壁と、その乗り越え方を、読者自身の立場からも問い直したくなる内容です。

弱者の居場所がない社会 貧困・格差と社会的包摂

日本社会の「見えづらい排除」を浮き彫りにする、社会政策研究の第一人者・阿部彩氏の一冊です。表面的には「平等で豊かな社会」と思われがちな日本の現実に、「居場所のなさ」「孤立」「沈黙の貧困」という切り口で迫ります。

著者は、貧困問題の裏にある「感情」「関係」「つながりの喪失」といった、社会的包摂の本質に目を向けます。「排除」は制度や政策の問題だけでなく、わたしたちひとりひとりの無意識な態度の中にもあるのだと気づかされます。

「誰もが居場所をもてる社会とは何か?」を根本から問う、現代社会を生きるすべての人にとっての必読書です。

弱者はもう救われないのか

精神科医として長年「声なき声」と向き合ってきた著者・香山リカ氏が、現代社会の冷たさに問いを投げかける一冊。「弱者にやさしい社会」は本当に失われてしまったのか?その問いに対する考察が詰まっています。

生活保護や障がい、精神疾患、非正規雇用など、さまざまな立場に置かれた「弱者」とされる人々の声や実情を紹介しながら、日本社会における無関心や分断の深まりを指摘します。

「自己責任」が当然視される今、「なぜ弱者を救うのか」という根源的な問いに対し、著者は逃げずに真正面から向き合います。

誰もが、いつ弱者になるかわからない。
そんな時代にあって、本書はわたしたちの生き方と、社会の在り方を見つめ直すためのヒントを与えてくれる一冊です。

「弱者」とはだれか

「弱者」という言葉は、いったい誰を指しているのか? そして、なぜ“弱者”というレッテルがここまで力を持つのか? 本書は、その問いに哲学的・社会学的視点から切り込む論考です。

著者の小浜逸郎氏は、あらゆる場面で登場する「弱者擁護」の言説を鵜呑みにせず、その背後にある価値観や社会構造そのものを問い直します。「弱者」という概念がときに利用され、政治的な“武器”として機能してしまっている現実を鋭く指摘。支援や共感の名のもとに、逆に分断や被害者意識を強める結果になっていないかという警鐘を鳴らしています。

1999年刊行とやや古い出版ですが、その内容は現代にも通じる問題提起に満ちており、むしろ今こそ再読に値する一冊といえるでしょう。

ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

「弱者」と聞くと、多くの人が連想するのは、病気や障害、貧困といった“目に見える”弱さかもしれません。けれど、日々ケアに関わる中で感じるのは、「誰もが弱さを抱えている存在である」という事実です。

印象的なのは、「ケアとは、弱さと向き合うことを通じて、わたしたち自身の弱さを知ることでもある」という視点。つまり、ケアとは一方的に“強い者が弱い者を支える”行為ではなく、支える側もまた支えられながら成り立っている相互の関係だということです。

「弱者をどう救うか」ではなく、「弱さをどう受けとめ、共に生きていくか」。「弱さ」を支えるとはどういうことか?
ケアに携わるすべての人に、そして“弱者”という言葉に違和感を覚えるすべての人に問いかける一冊です。

マイノリティデザイン 「弱さ」を生かせる社会をつくろう

“弱さ”は不利なものではない。それはむしろ、社会を変える原動力になり得る――。
本書はそんな前向きなメッセージを掲げ、「マイノリティ=弱さ」を武器に変える思考法と実践を描いた一冊です。

著者の澤田智洋氏は、広告代理店でコピーライターとして働きながら、「障がい者サッカー」や「スポーツ弱者のための運動会」など、多様な企画を生み出してきた人物。本書では、自身の息子が難病をもって生まれた経験を出発点に、「社会の側が変わることで、弱さが強さに転じる」という視点を提示します。

「弱さをなくすのではなく、生かす」
「できないことがあるから、他者とつながれる」
こうした逆説的な発想に、価値観を揺さぶられます。

新版 ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則

「弱者は弱者らしく戦え」――この一見ネガティブに聞こえるフレーズに、驚くほど実践的な知恵と希望が詰まっています。
本書は、ビジネスや地域経営において“圧倒的強者”に勝てない中小企業や個人事業者が、生き残り・勝ち抜くための具体的な戦略を、ランチェスター戦略の視点からわかりやすく解説した一冊です。

著者の福永雅文氏は、ランチェスター戦略の第一人者として、数多くの企業支援や講演を行ってきた実務家。本書では、軍事理論を起源に持つランチェスター戦略を現代のビジネスやまちづくりに応用し、「弱者が強者に勝つための法則」を豊富な事例とともに伝えています。

「一点集中」「局地戦」「差別化」「全部で勝とうとしない」「リソースを分散しない」「自分にしかできない価値で勝負する」これらの考え方は、強者に勝てない個人や小規模組織にとって欠かせない戦略となるでしょう。

 

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まとめ

「弱者を救う」のではなく、「弱さを生かす」「弱さと共に生きる」。
今回ご紹介した7冊の本には、そんな価値観の転換が詰まっています。

わたしたちは、誰かの「支援者」であると同時に、いつ「支援される側」になるかもしれない存在です。だからこそ、弱さに対する視点を見直すことは、他人のためだけでなく、自分自身の人生や社会のあり方を深く見つめ直すきっかけになるはずです。

“強くなれない人間には価値がない”――そんな風潮に違和感を覚えたとき、ぜひこの記事で紹介した本を手に取ってみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。