業務スキルとノウハウ

なぜ介護現場で「正解を求めすぎる人」はうまくいかないのか?

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介護の仕事をしていると、「正解はなんだろう?」と考えることがたくさんあります。
マニュアルや指示通りに動いているのに、なぜかうまくいかない…。
そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?

実は、介護のような「人と関わる仕事」では、「正解を求めすぎる」とかえってうまくいかなくなることがあるんです。
今回はその理由について、わかりやすくお話ししていきます。

 

この記事を書いた人


takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

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対人援助に「絶対的な正解」はない

介護は、「人を支える仕事」です。
そして人には、ひとりひとりちがった考え方、価値観、生活スタイルがあります。
だからこそ、同じように見える場面でも、正しい対応は人によって変わってくるのです。

でも、わたしたちは「正解があるはずだ」と思ってしまいがちです。
学校のテストのように、「これが正しい」「これは間違い」とはっきり決めたくなってしまうんですね。
そしてその“正解”を、すべての人に当てはめようとしてしまいます。

実際にあったエピソード:正しさより大事なことがある

わたしが入所施設で生活相談員をしていたとき、こんな出来事がありました。

90歳のKさんという男性がいました。
Kさんは「心不全」という病気があり、お医者さんから「塩分を1日6gまでにしましょう」と言われていました。
そのため、施設では食事の塩分をしっかり制限していました。これは医療的には正しい対応です。

でも、ある日Kさんはこんなことを言ったんです。

「死んでもいいから、塩辛が食べたい」

塩辛はとても塩分が高い食べ物なので、Kさんの体にはよくないかもしれません。
でも、90年という長い人生を生きてきたKさんにとっては、食べたいものを食べることが、生きる楽しみだったのかもしれません。

わたしはこの思いをチームの会議で伝えましたが、「医師の指示を守るべき」という考えが優先され、Kさんの希望はかなえられませんでした。
その後、Kさんは塩辛を食べることなく、静かに最期を迎えました。

今でもときどき思います。

「本当にあれでよかったのか?」

「正しさ」にこだわりすぎると見えなくなるもの

もちろん、お医者さんの指示を守ることは大切です。
でも、それだけがすべてではないはずです。

  • 「この人にとっての幸せってなんだろう?」

  • 「自分がこの立場だったら、どうしてほしいと思うだろう?」

こういったことに目を向けないまま、「正しいからこうする」と決めつけてしまうと、
相手の思いや願いを置き去りにしてしまうことになります。

白黒はっきりつけることが正しいとは限らないのが、介護という仕事の難しさでもあります。

グレーの中にある“その人らしさ”を大切に

もしKさんの希望に少しでも寄り添えていたら、違う結果になっていたかもしれません。

たとえば――

  • 「週に1回だけ、少量の塩辛を楽しむ日をつくる」

  • 「塩分控えめの似た食材を工夫して提供する」

  • 「少しだけ、口に含ませるだけにする」

こんな“グレー”な工夫も、きっとできたはずです。

「白=絶対ダメ」「黒=何でもOK」ではなく、
その間にある“グレーな部分”をどう活かしていくか。
それこそが、介護において大切な視点です。

介護の「正解」とは、その人にとってのベストを考えること

介護の仕事には、テストのような“正解”はありません。
あるのは、「その人にとっての最善(ベスト)」を考え続ける姿勢です。

  • 同じ年齢でも、考え方は人それぞれ

  • 同じ病気でも、求める生活の形はちがう

  • 正しさよりも、「その人らしさ」をどう守れるかが大事

ひとりひとりと向き合い、その人に合ったかたちを探っていく。
それが、対人援助の本質であり、やりがいでもあります。

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まとめ

介護の現場でうまくいかないと感じたとき、
「自分は正解にとらわれすぎていないかな?」と振り返ってみることも大切です。

  • 正しさだけでは、人の心は動かない

  • グレーな部分にこそ、その人らしさがある

  • 完ぺきを目指すより、「ベターな選択」を見つけよう

唯一の正解なんてない――
だからこそ、悩みながらも一人ひとりと向き合っていくわたしたちの姿勢が、相手にとっての大きな支えになるのだと思います。