ショートステイでは、利用者の急な入所希望に対応することがあります。
つい先日も、わたしの勤務先のショートステイで緊急受け入れの依頼を受けました。「ご家族の急病のため、今すぐ入所したい」とのこと。わたしは急いで受け入れの準備を進め、その方は無事入所することができました。
ですが、その方の介護認定は「要支援」…。そのため「緊急短期入所受入加算」を算定することができませんでした。
介護保険には、ショートステイ事業所の緊急受け入れを評価する加算として、緊急短期入所受入加算というものがあります。この加算、実は要介護者のみが対象で、要支援者には適用されないのです。緊急受け入れにかかる手間や負担は、要介護も要支援も大差がないにもかかわらず、要支援だと加算が算定できないという現行の制度に対し、わたしは疑問を感じてしまいます。
そこでこの記事では、このショートステイの緊急受け入れルールの矛盾について考えてみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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ショートステイの緊急受け入れとは?
本来ショートステイは計画的な利用が求められますが、利用者のご家族の急病などやむを得ない事情によっては、緊急受け入れをすることがあります。緊急で利用者を受け入れる場合、施設側としては、以下のような負担が生じます。
- スタッフ間の早急な情報共有
- 空きベッドの調整
- 支援計画書の作成
このような突発的な受け入れにかかる対応を評価するために、緊急短期入所受入加算が設定されています。
特に、新規利用者の緊急受け入れの場合は、どんな状態かまったくわからない方をすぐに受け入れなければなりません。情報が不十分だと思わぬケガや事故が起きてしまいますから、限られた時間の中でどんな方なのか情報収集し、スタッフ間で共有する必要があります。利用者を安全に受け入れるために、事業所が担う責任と負担は大きと言えるでしょう。
緊急短期入所受入加算とは?
緊急短期入所受入加算の概要は以下のとおりです。
- ショートステイを緊急で利用した場合に算定できる加算
- 算定日数:最長14日
- 単位数:90単位/日
続いては、算定要件の概要です。
- 居宅サービス計画に計画されていない緊急的な受け入れであること
- 担当ケアマネジャーが緊急利用の必要性と利用を認めていること
- 利用の理由、期間、受け入れ後の対応を記録すること
- 受け入れ後の適切な介護の方策について、担当ケアマネジャーと連携し相談すること
以上のプロセスを踏むことで、ショートステイ事業所は緊急短期入所受入加算を算定することができます。

要介護でも要支援でも受け入れの負担は同じ
ショートステイの現場では、要介護者と要支援者で、緊急受け入れの負担に大きな差はありません。むしろ、要支援者であっても認知症や心身的不調を抱える方もいらっしゃり、手厚いサポートが必要なケースもあります。緊急受け入れに対する事業所の負担は、要介護度によって決められるものではありません
ですが、制度上の区分によって、施設側は同じ業務をしても要介護者は緊急短期入所受入加算を算定できて、要支援者は算定できない、という矛盾が生じているのが現状です。
要支援でも算定できるような仕組みが必要
現行のルールでは、要支援者の緊急受け入れを行っても緊急短期入所受入加算が算定できないため、職員の業務負担が報われません。
この問題を解決するために、要支援者でも緊急短期入所受入加算を算定できる仕組みにすることが望ましいと、わたしは思います。要介護と同様に要支援でも算定できるようになれば、緊急受け入れを行った事業所が多少なりとも報われるでしょう。次回の介護報酬改定では、要支援者の緊急受入加算が新設されることを期待したいと思います。
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まとめ
ショートステイの緊急受け入れにおいて、要支援者への加算がない現行の制度は、現場の負担と実態に合っていないと言えます。今後、制度が見直されることで、施設側の負担が適切に評価され、利用者や家族にとってもより利用しやすい仕組みになることを期待したいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。