昨今、テクノロジーの活用により介護職員の人員配置基準を緩和しようとする動きが活発化しています。
そこでこの記事では、介護業界においてテクノロジーはどのような手段を果たすべきかについて書いていきたいと思います。
わたし個人としては、テクノロジーは人員配置基準の緩和を目的とするのではなく、介護職員が働きやすさを向上するために活用すべきだと思うのですが、みなさんはどうお考えになりますか?
takuma(@takuma3104 ) 生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
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人員配置基準の緩和の動き
昨今、介護施設の人員配置基準をテクノロジーによって緩和しようとする動きが見られます。
人員配置基準とは、介護施設の利用者人数に対して配置すべき職員の人数を定めたものです。介護保険法に基づき、介護施設は「入所者3人に対して職員1人」といった配置基準が決められています。「3:1」と呼ばれているやつですね。
この人員配置基準を、AIやICTといったテクノロジーの活用により緩和しようとしています。
人手不足解消のために基準緩和を目論む厚労省
介護業界は人手不足が続いています。
この人手不足を解消することが、介護業界の大きな課題です。
人手不足解消の手段のひとつとして、人員配置基準を緩和してはどうかと厚労省は考えています。
人員配置基準を緩和することによって、今より少人数の介護職員で介護サービスを提供したいと考えているわけですね。
介護職員が足りなくて人員配置基準が満たせない。
↓
だから人員配置基準を緩和しよう。
このように、厚労省が掲げる人員配置基準緩和案は、極めて消極的な発想に基づいています。
「ケアマネのなり手がいない。→だったら受験資格を緩和して試験を受ける人を増やそう。」という、ケアマネのなり手不足問題の改善策と発想が似ていますね。
テクノロジーは人員削減の手段?
人員配置基準を緩和するための手段として「テクノロジーを活用してはどうか?」という案が出て、2022年には実証事業も行われました。
つまり、人員削減の手段としてテクノロジーを使おうとしているわけです。
しかし、ちょっと考えてみてください。
入所施設の人員配置基準は3:1です。具体的には、入所者の定員が30人にだとしたら職員数10人で介護にあたるということになります。
介護施設はシフト制ですから、夜勤も含めて30人を10人で見なければなりません。そうすると、日中の職員数は3〜4人といったところになるでしょう。
とてもじゃありませんが、この人数は利用者を安全にみられる数ではありません。
このように、現在の3:1の基準でも不十分なのですから、テクノロジーを活用して人員配置基準を緩和するというのは暴論ではないでしょうかす。
いくらテクノロジーを活用しても、実際に介護を行うのは他ならぬ「人」なのです。これ以上人員基準を緩和すれば、転倒事故などのリスクはさらに高まるでしょう。
テクノロジーを導入したからといって、これ以上人員を減らすことは事実上困難です。
ですから、介護職員が足りないという問題を解決するためには、介護職員そのものを増やすしかないといえます。
テクノロジーは労働環境向上のための手段である
テクノロジーは人員を削減するためのツールではありません。
あくまでも、介護職員が働きやすくなるための手段です。
ですから、今働いている人を大切にするための手段としてテクノロジーを使っていくべきだとわたしは思います。
テクノロジーを使って人員を削減しようと考えるよりも、どうやって介護業界に人を集めるかを考える方が先決ではないでしょうか。
テクノロジーは、介護業界の労働環境をよくするための貴重な手段です。
労働環境をよくするためにテクノロジーを活用すれば、働いている人が今よりも幸せに働くことがでができ、今働いている人が幸せに働ければ、介護業界に人を集めることもできるかもしれません。
テクノロジーを使って人員を削減しようとするのではなく、介護業界で働く人をもっと幸せにするための手段としてテクノロジーを使っていきたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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