仕事に悩みはつきもの。ときには辞めたくなることだってあります。かく言うわたしも、決して順風満帆な社会人ライフを送ってきたわけではありません。
ここでは、わたし自身が今の職場を辞めて転職を考えたときのエピソードを語らせていただきたいと思います。ひとりの生活相談員の経験談ではありますが、仕事で悩んでいる方や転職を考えている生活相談員の方の参考になれば幸いです。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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順調な転職から一転
そもそもわたしは、今の職場で働く前にも一度転職を経験しているんです。新卒で入った急性期病院を3年で辞め、その後今の施設でデイサービスの生活相談員として働いています。
今の施設で働くようになってからは、以下のようなキャリアを積みました。
26歳 デイサービスの生活相談員
↓
28歳 特定施設の生活相談員(係長)
↓
31歳 デイサービス・ショートステイの生活相談員(副施設長)
転職してから5年、31歳で副施設長を任されるまでにスピード昇進。自分でも順調にやれている気でいました。朝起きて仕事に行くのが毎日楽しくて仕方なかったのを覚えています。
……
しかしながら、事はうまく進みません。
数字の伸び悩み&上司からのパワハラ
わたしが副施設長になったあたりから、デイサービスとショートステイの利用者数が徐々に減ってきていました。入社してから今まで落ち目がなかったわたしは、「利用者数の減りは一時的なものだろう」と高をくくっていました。しかしながら、現実はそんな簡単な話ではありませんでした。
利用者数は右肩下がりに落ち続けていきます。一向に改善されず、ついにデイサービスの1日の稼働率が30%台になることも…。それに伴って、上司からの風当たりが厳しくなってきたのです。
「利用者が来ねぇのはおめぇが悪い!!」
「おめぇの言い訳なんて聞きたくねぇんだよ!!」
利用者数を増やせないわたしに対して、上司は毎日罵声を浴びせてきました。マネジメント力やコミュニケーション力の不足、そして何よりも営業を軽視していたことなど、利用者数の落ち込みの責任はわたしにもあります。しかしそれに対する上司の姿勢は、パワハラと言ってもおかしくないものでした。
経営の最終責任は組織のトップにあるはずです。わたしだけが悪いわけではありません。しかしながら上司は、利用者数が減った責任の矛先を生活相談員としての実務を担っているわたしに向けてきたのです。
毎日の罵声と役職降格
「どう責任とんだよ!!」
「おめぇが誰かのクビ切れよ!!」
毎日の罵声は続きます。あるときは朝礼でみんなの前でつるし上げられ、またあるときは報告しようとしてもシカトされ口をきいてもらえず…。「やったことを毎週報告しろ」と報告書の提出を求められたり…もちろん毎日サービス残業です…。周りも見て見ぬふり。誰も助けてはくれない。
…正直この時期の記憶はあまり振り返りたくないですね。これを書いてて当時を思い出してきてしまいました…。ほんとに嫌な記憶です。
これで精神を病まないはずがありません。しかしながら、奇跡的にわたしはうつ病になることなく乗り切りました。でも、もし病院に行っていたらうつ病って診断されてたのかなぁ?とにかく毎日仕事に行くのがつらくて、朝起きるとお腹が痛く、「また今日も怒られるなぁ」といったメンタルが続きます。休みの日も仕事のことが頭から離れません。
それでも休まずに出勤しました。しかし、数字が改善されることはありませんでした。そして、とうとうわたしは利用者数を上げられない責任を取らされるというかたちで、役職を降格されることになりました。しかしながら、それにより責任がなくなったわけではありません。降格はしたものの、状況はこれまでと変わりませんでした。
そしてわたしは、転職を考えるようになりました。
転職をモチベーションにして働く日々
一度転職をしてせっかく職場内のキャリアを積んできたのに、これを手放すのはもったいないなぁといった思いもよぎってはいました。でも、今のままじゃ心身がもたないのもまた事実。実際のところわたしは、「今の職場を辞めて別のところで幸せに働く」という夢を見ていないと日々やっていけませんでした。求人サイトを見てよさそうな求人先を探すことで、毎日のメンタルをなんとか保っていました。
とはいえ、見てるだけでは何も変わらない。というわけで実際に転職活動もしました。何社か面接を受け、ありがたいことにそのうちひとつの介護施設から内定をもらうことができました。「これで今の職場を辞めて楽になれる!」そんな思いで心が楽になったのを思えています。
引き止められて今の職場に残留
内定をもらってから数日後、満を持してわたしは、退職して別の職場で働く意思を上司へ伝えました。
わたしの話を聞いた上司はひどく怒りました。「裏切りだ!」と言って激しく罵倒されました。しかし徐々にクールダウンしてきて、今までのこと、これからのことについての話になりました。
「辞めないほうがいい」
最後に上司はこう言いました。
上司からの引き止めに合い、転職の思いが揺らぐわたしがいました。あれだけ心に決めた転職でしたが、結果的にわたしは上司からの引き止めを拒むことができず、今の職場に残るという選択をとってしまったのです。
転職に踏み切れなかったのは、上司の引き止めを拒むのがこわかったというのもありますが、実は他にも内定先の給与面に問題がありました。内定先の施設の給料は、今の施設の2/3の金額だったからです。結婚して子どもが生まれたばかりのわたしにとって、この収入減はかなりの不安要素でした。それに、この話し合いで自分の意思を伝えたことで「上司が変わってくれるのでは?」と期待してしまったわたしもいました。
結果的にわたしは転職をせず、今の職場に残ることになりました。
組織に依存しない働き方を模索中
その後なぜか利用者数が徐々に回復をみせてきました。理由はわかりません。そして、上司のわたしへの風当たりもすこしずつ弱まってきました。怒られることも少なくなり、最悪だった関係性は徐々によい方向に向かっていったのです。
そして現在、わたしはこの職場を辞めずに今も働き続けています。
しかし、仕事への向き合い方に対するわたしの気持ちは、この経験を通してだいぶ変わりました。
組織に依存せず、組織を利用して自分個人の力をつけていく。
これが今のわたしの仕事への気持ちです。
所属組織に尽くす旧来のスタンスから、組織とほどほどに距離を置くスタンスを取るようになりました。何かあったときに責任をなすりつけてくるのが組織です。そんな組織に過度な期待をしてはいけません。とはいえ、組織にもよさはあります。毎月安定した収入は入ってきますし、社会的地位も保てます。組織に所属することでもらえるうま味は、十分活用したほうがお得です。
絶妙なバランスで“うまくやる”こと。組織に対する忠誠心をポーズとして見せながらも、ただの労働力として搾取されるのではなく、組織を利用して自分個人の価値を磨いていく。そんな働き方を現在は模索中です。
迷ったら転職
わたしの場合、転職せずに留まったことがたまたま最悪の結果にはならずに済みました。ですがこんなものははっきり言って、例外中の例外です。
上司との関係性が改善したのは、たまたまです。基本的に自分以外の周りの人が変わることはありません。また、わたしは期待してしまいましたが、周りの人が変わることを期待してはいけません。自分の力で他人を変えることなんて無理です。今の仕事がつらくてどうしても逃げ出したいときは、自分が変わる、つまり転職するしかありません。
わたしのように我慢する必要はありません。「他人は変えられない。嫌なら逃げる。」これは大事なことです。
とはいえ、転職に過度に夢を抱きすぎるのも注意が必要です(転職に夢を抱いていたわたしが言うのも何ですが…)。
完璧な職場などありません。どんな職場であっても、大なり小なり自分に合わない部分はあります。組織で働くということは、どこかで自分と組織との妥協点をつくるしかないのだと思います。
また、この介護業界自体、将来が明るいとは言えません。介護業界は弱小業界です。需要はありますが、低い介護報酬で従業員への好待遇は基本的にどこも望み薄ですから、無理ゲー感は否めません。この業界に留まるか離れるかといった判断も必要となってくるでしょう。
でも、でもですよ。もしあなたが今の仕事に悩んでいて、つらくてつらくて仕方なければとりあえず今の職場から逃げましょう。まずはそこからです。自分の身は自分しか守れません。誰よりもまず自分を大切にしてあげてください。仕事なんてそれからで十分だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。