ケアマネジャーは、介護保険サービスを利用するにあたっての調整役です。
調整にはあらかじめルールが決まっていて、ルールに従って調整をしなければなりません。
そのルールは、介護保険法で決められています。
介護保険法第2条には、
『保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者からの選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者または施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。』
とあります。
また、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準、第1条にも、
『指定居宅介護支援の事業は、利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、利用者からの選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的にかつ効率的に提供されるよう配慮して行われるものでなければならない。』
という記載があります。
これを簡単にまとめますと、
「ケアマネジメントは、利用者を個別的に扱って、利用者にサービスを選んでもらって、多くの事業者からサービスが提供されるようにやってくださいね」
ということです。
この内容について、
「利用者を個別的に扱うこと」
と
「利用者にサービスを選んでもらう」
ということは腑に落ちます。
「利用者を個別的に扱うこと」
とはつまり、ひとはそれぞれみんな違うのだから、同じように接しないようにしましょうということですね。
『バイスティックの7原則』における、『個別化』にあたります。
「利用者にサービスを選んでもらう」
他者からの処遇を受けるのではなく、利用者自らが契約をして受けるサービスを選ぶということです。
これは『バイスティックの7原則』における、『自己決定』にあたります。
「画一的、処遇的なケアマネジメントは利用者の利益を損ねてしまう」という理屈は、通っていますよね。
問題は
「多くの事業者からサービスが提供される」
ということについてです。
多くの事業者からサービスを提供されることで、利用者は得をするのでしょうか?
断言できます。
得をしません。
利用者は、適切なサービスを受けられればそれで満足です。
「適切なサービスを受けた結果として、多くの事業者からサービスを受けることになった」
なら話はわかります。
しかし、最初から
「多くの事業者からサービスを受ける」
という結果を決められてしまい、
「敷かれたレールに沿ってケアマネジメントを行ってください」
と言われてしまっては、ケアマネジメントなんて最初から無いも同じです。
「ケアマネジャーが特定の事業所ばかりを利用しないようにするため」
という意見もありますが、逆に
「ケアマネジャーが特定の事業所ばかり利用して何が悪い」
のでしょうか?
「ケアマネは自分の所属事業所のサービス使うべきである」
ということについては、別の記事にまとめたものがありますので、こちらをご覧ください。公正中立とか言ってないでケアマネは所属先の利益を追求すべき!
自分の所属している事業所でなかったとしても、
「いいサービスを提供している事業所だけをバンバン利用者に紹介すること」が、なぜ悪いことなのでしょう?
仮にケアマネが調整したサービスが1ヵ所に片寄ったとしたって、
「それは適切にケアマネジメントを行った結果なのだから、それでいいじゃないですか」
医者が患者に病院を紹介するのと一緒だと思います。
医者がどこの病院を紹介しようが、国は口出ししてきませんよね。
ケアマネジメントも同様であるべきだと思います。
だって、医師が医療の専門職であるように、ケアマネジャーはケアマネジメントの専門職なのですから。
きっと、ケアマネジャーという資格は国から十分信用されていないのだと思います。
寂しいですが。
適切なケアマネジメントが行えないということは、利用者の利益損失となるわけですから、やはり今の仕組みを見直す必要があるんじゃないのかなぁ、と思うのですが。
専門職として、もっと裁量をもらえないものなのでしょうかね。