こんにちは。生活相談員のtakumaです。
日々、介護施設や在宅支援の現場でご利用者やご家族と向き合う生活相談員にとって、「話を聞く力」は非常に重要なスキルのひとつです。
相談支援の本質は、「相手の思いを理解すること」であり、その第一歩が、「どう聞くか」にかかっています。
「相談員なんだから、話を聞くのは当たり前」と思われるかもしれませんが、ただ黙って聞いていればいいわけではありません。聞き方ひとつで、相手の気持ちは大きく変わりますし、その後の支援の進み方にも差が出ます。
今回は、わたし自身が生活相談員としての経験を重ねる中で実感した「信頼を得る聞き方のコツ」を、5つのポイントに絞ってお伝えします。
話を最後までさえぎらずに聞く
相手の話を途中でさえぎるのは、信頼関係を損ねる一番の要因です。
たとえば、あるご家族が「もう限界なんです…」と切り出したとき、「それならショートステイ使いましょうか!」とすぐ提案してしまったことがあります。
一見、親身になって対応しているように見えるかもしれませんが、実はご家族は「介護の限界」ではなく、「自分の仕事との両立の不安」や「周囲の理解が得られない悩み」を話したかったのかもしれません。
焦って結論を出すと、相手は「ちゃんと聞いてくれなかった」と感じてしまいます。
相手の話には、ときに遠回しな表現や前置きが含まれています。結論を急がず、「話し終えるまで待つ」という姿勢が、信頼の第一歩になります。
相づちやうなずきで「聞いていますよ」のサインを出す
「うんうん」「なるほど」「そうなんですね」など、相づちは相手に安心感を与える小さなサインです。
無言で頷いていても、伝わらないことがあります。逆に、うなずきすぎたり、機械的に返事をしていると「聞き流してるな」と思われることも。
大切なのは、タイミングと気持ちをこめること。
特に感情がこもった話や、つらい経験を語っているときは、「それは大変でしたね」と、相手の感情に寄り添った言葉を返すことで、「この人には話してよかった」と思ってもらえます。
相談支援の場面では、言葉以上に“態度”が物を言います。
話し手の心が開かれるか閉じられるかは、聞き手の反応次第と言えるでしょう。
話の内容だけでなく“背景”や“感情”にも耳を傾ける
生活相談員は「表面的な言葉」だけでなく、その裏にある“本音”や“背景”を汲み取る力が求められます。
たとえば、「最近デイに行きたくない」と言う利用者がいたとします。
それを「ただのわがまま」「気分の問題」と片づけてしまえば、解決にはつながりません。
実は、デイでの人間関係に悩んでいたり、トイレの誘導が間に合わないことで恥ずかしい思いをしていた、というケースもあります。
「どうして行きたくないのか」「いつからそう思っているのか」
質問を重ねながら、丁寧に深掘りしていくことで、相手の気持ちにたどり着けることもあります。
相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、「なぜ今この話をしているのか?」という視点を持って聞くことが大切です。
聞きっぱなしにせず、要点を整理して返す
話を聞いたあと、「つまりこういうことですね」と一度内容を整理して返すことで、相手は「きちんと理解してもらえた」と安心します。
これは“リフレクティブリスニング(反射的傾聴)”とも呼ばれる技法で、話の内容や感情を要約して相手に返す方法です。
たとえば、
「お父さんの介護でお母さんが疲れていて…でも誰にも頼れないって言ってて…私もどうしていいかわからなくて…」という話に対して、
「お母さんの負担が大きくて、ご家族全体が疲れている感じなんですね。◯◯さんも何とかしたいと思っているけど、方法が見えないんですね」
と返すことで、相手は「ちゃんと伝わってる」と感じます。
さらに、この要約は、記録を書くときや担当者会議の説明でも非常に役立ちます。
相手の話を「整理する力」も、相談員に求められる大切なスキルです。
急がない。沈黙も受け止める
相談の場面で“沈黙”が流れると、不安になる方も多いかもしれません。
「何か言わなきゃ」と焦って、話題を変えたり、結論を急いでしまうこともあります。
でも実は、沈黙は「相手が気持ちを整理している時間」です。
特に重い話題や感情を伴う相談では、一呼吸おいて言葉を選ぼうとする場面が必ずあります。
その沈黙を邪魔せずに、ただ静かに待つことができるか。
それが、生活相談員としての“器の大きさ”を示す瞬間でもあります。
わたしの経験でも、数秒の沈黙のあとに「…ほんとはもう無理なんです」と本音を打ち明けてくれた方がいらっしゃいます。
「沈黙を怖がらないこと」。それは、聞き手としての信頼感につながります。
まとめ
生活相談員は、制度やサービスの知識ももちろん必要ですが、それ以上に「人の話を聞く力」が問われる仕事です。
今回紹介した5つのポイントをおさらいします。
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話を最後までさえぎらずに聞く
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相づちやうなづきで“聞いている”ことを伝える
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表面の言葉だけでなく、背景や感情にも注目する
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内容を整理して相手に返すことで、理解を伝える
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沈黙も大切な“対話”として受け止める
この5つを意識するだけで、ご利用者やご家族との関係性はぐっと深まります。
そして、相談支援の場も、より信頼と安心に満ちたものになっていくはずです。
あなた自身の聞き方が、誰かの人生を変えるかもしれません。