人は相談したがらないもの
「相談の定義」の中で、「相談は困ったことがあるときにするものである」と書きました。
人は困ったとき、誰かに相談をします。
ですがそれと同時に、人はちょっとやそっとのことでは誰かに相談しないものです。
その理由は、相談することに心理的ハードルを高く感じるからです。
わたし自身の人生を振り返ってみても、積極的に自分の悩みを誰かに相談するということはありませんでした。
自分ひとりで考えたくて、他人には相談したくありませんでした。
誰かに相談するくらいなら、自分で何とかしたほうが精神的に楽なのです。
特に、わたしの場合は人見知りなので、心理的ハードルは人一倍高いのだとは思うのですが…
程度の大小は個人差あれど、相談することへの心理的ハードルは誰しもが抱くものです。
では、なぜわたしたちは、相談することに心理的ハードルが高いと感じるのでしょう?
その理由は大きく3つに分けることができます。
どんなことで相談者のハードルが高くなっているのか、ひとつひとつ見ていきましょう。
相談者の心理を理解しておけば、おのずと相談に乗る力もアップするでしょう。
① 他人に悩みを打ち明けなければならないから
② うまく言葉にできないから
③ 自分の気持ちに向き合うのがつらいから
次項でそれぞれ解説していきます。
相談への心理的ハードルが高くなる理由
① 他人に悩みを打ち明けなければならないから
相談をするためには、自分以外の誰かの存在が必要です。
つまり、自分以外の誰かに自分の悩みを打ち明ける行為が相談です。
これは、とても心理的ハードルが高い行為と言えます。
というのは、人は自己開示をすることに対し抵抗感を感じるからです。
話し相手に自分自のことをありのままに伝えることを、自己開示といいます。
自己開示をすることは、相手に自分自身の「弱み」を見せることになりますので、初対面の人や信頼できない人などに自己開示をすることは、心理的にためらわれます。
「こんなこと相談したら嫌がられるんじゃないか」
「こんな思いを誰かに言ったら変に思われるんじゃないか」
といった気持ちが相談をする妨げとなり、相談につながらないといったことがよくあります。
誰にも相談せずに問題が解決すれば、他人に弱みを見せずにすみますからね。
そのような思考により相談することの心理的ハードルを高くし、相談する機会遠ざけてしまいます。
相談に乗る側が心得ておかなければいけないことは、人から「相談に乗ってほしい」と言われたとき、その人は相当な決意であなたに自己開示しようとしているということです。
「自己開示という心理的ハードルをこえて、わたしに相談してくれている」ということを認識し、その気持ちを汲んであげられるとよいでしょう。
② うまく言葉にできないから
相談への心理的ハードルが高くなる理由の2つ目は、自分の悩みを「うまく言葉にできない」ということです。
多くの人は、自分の悩みを言葉にしようとしたとき、「自分の気持ちがわからない」ことにはたと気付きます。
「悩み」という抽象的なものを、「言葉」という具体的なものに落とし込むことは、簡単ではありません。
大変であるとともに、ストレスが伴います。
その結果、悩みを相談せずにそのまま放置してしまうという選択肢を選びます。
相談に乗るときに覚えておきたいことは、相談者が悩みをうまく伝えられなくても仕方ないということです。
悩みなんて、言葉にできなくて当たり前です。
相談に乗る側は、相手の話がよくまとまっていなくても、「そういうものだ」と認識したいものです。
そして相談をする中で、相手の悩みが言語化できるようにお手伝いをしてあげましょう。
それが問題解決のための第一歩となります。
③ 自分の気持ちに向き合いたくないから
相談への心理的ハードルが高くなる3つ目の理由は、「自分の気持ちに向き合いたくない」からです。
相談によって問題の本質(=自分の嫌な面)に行きつくことを無意識的に恐れるため、人は相談を避ける傾向があります。
問題を解決するためには、自分の気持ちに向き合うことが必要になります。
自分の気持ちに向き合うことは心の痛みを伴うため、簡単ではありません。
それゆえ、相談への心理的なハードルが高くなるのです。
自分の悩みと向き合うことで、自分でも意識していなかった無意識の自分を見つめなければならないことがあります。
自分の本当の気持ちに向き合わないほうが、正直言って楽です。
ですがそれでは根本的な悩みの解決には至りません。
医療には「対症療法」といって、根本治療は行わず患者さんの症状を軽減するための処置のみを行う治療法があります。
あくまでも対症療法にしかなりません。
相談をすることで人は真剣に考えざるを得なくなりますから、そういった自分の気持ちと嫌でも向き合うことになります。