介護・福祉情報室

【社保審】的外れな「ショートステイの長期利用是正」の議論

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気になる記事を見つけました。2020年7月20日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で行われた議論の内容が書かれた記事です。

https://gemmed.ghc-j.com/?p=35122

記事にはこう書かれています。

短期入所生活介護(ショートステイ)について、一部だが「長期利用」が目立つ。介護報酬上の「長期利用における減算」規定の見直しも含めて、是正策を検討していく―。

曰く、ショートステイの「長期利用」が問題になっているとのことですね。

ショートステイの長期利用が増えているから、30日を超えて利用した場合の減算幅(現在は-30単位)を増やせば是正されるのではないか、というような議論がどうもされているらしい。

「ショートステイであるのに、長期利用の実態がある」ことがよくないことである、ということが問題なのはまあ理解できる。

しかし、その是正策として減算幅を今より増やせばよいという議論は、的外れではないだろうか。なぜなら、ショートステイの長期利用が増えている原因はショートステイにあらず、ケアマネジメントにあるからだ。

ショートステイ事業者の側から言わせてもらうと、われわれショートステイ事業者側はあくまでもケアマネジャーの作成するケアプランに従って、サービスを提供しているに過ぎない。つまり、ショートステイ側が主導で長期利用を推し進めているわけではないということだ。ケアマネが本人ないし家族と、ショートステイ利用の日程調整をおこない、われわれショートステイの事業所側はケアマネから連絡を受けた日程を予約するだけ。つまり完全に受け身なのである。

そんな仕組みであるというのに、「長期利用の減算幅を大きくすれば長期利用が是正される」とは、どんな理屈だろう?長期利用による減算を増やしてダメージを受けるのは、もちろんショートステイである。しかしながら、長期利用を計画する側のケアマネジャー側には、なんのペナルティーも検討されていない。この状況ではたとえ減算額を増やしたところで、長期利用が是正されるはずはない。

さらに切り込んで話をするなら、ケアマネだってなにも好き好んで長期利用を推し進めているわけではない。

ショートステイ以外にサービスの調整をする方法がなく、止むに止まれず利用しているのだろう。そして、それはケアマネだけの判断ではない。30日を超えてショートステイを利用する場合、ケアマネは自治体へ「超過利用理由書」なるものを自治体に提出したうえで、長期利用を認めてもらっている。隠れてこっそり長期利用をしているわけではなく、自治体にも周知の上長期利用をさせているのだ。

ショートステイの長期利用が多い地域は、当然その自治体もその状況を把握しているのだ。それなのに、抜本的な対策をとらず、「ショートステイ長期利用の減算幅を増やしましょう」という議論に落ち着いてしまうのは、「そちら側の怠慢ではないですか」と言いたくなってしまう。

もし国が、「ショートステイ本来の理念に立ち返りたい」と本気で思っているのなら、「減算幅を増やす」のような責任逃れのための議論なんてせずに、もっと本質をついた対策を期待したい。