先日、ケアマネジャー協会が主催しているケアマネジャービギナーズセミナーというものに参加してきました。
わたしは2018年に行われたケアマネ試験に合格し、2019年、トータル87時間の実務者研修を受け(めっちゃ長かった!)、ケアマネの資格を取得しました。
特にケアマネの仕事がしたいわけではありませんでしたので、資格はただ持っているというような感じです。
「今後もこの業界で働くし、とりあえず取得しておこうか」というような軽いノリと、本業は介護施設の生活相談員ですので、「営業に使えるかもしれない」というような気持ちが取得のきっかけです。
ケアマネジャービギナーズセミナーとは、わたしのように今年ケアマネの資格を取得した人や、資格は持っているけどケアマネの実務経験がない方や少ない方を対象にしたセミナーのようです。
「経験豊富な現役のケアマネジャーが皆さんの疑問にお答えします。寸劇を通して居宅介護支援の実践場面をイメージしていただくとともに、小グループに分かれ参加者皆様からのひとつひとつの質問に丁寧にお答えいたします」
というセミナーのうたい文句にひかれ、実務者研修は終えたけれども今一つケアマネへの理解が追いついていないわたしは、早々に申し込みをし、受講を楽しみにしていました。
しかし、実際はわたしが想像していたものとは大分異なり、なかなかのがっかりセミナーでありました。
何ががっかりだったのか、そしてそこから話を広げて、本来ケアマネ初心者にはどんなセミナーが求められるのか、私が思ったことについてお伝えしたいと思います。
ビギナーズセミナーの内容
参加者は30名弱といったところだったでしょうか。
6人くらいのグループに分けられ、まずは自己紹介と名刺交換。この辺はお決まりですね。
セミナーがはじまると、さっそく寸劇(!?)が!
あらかじめ案内にも書いてあったのですが、主催者側のスタッフによる寸劇がはじまったのです。
寸劇の内容は、ケアマネジャーがケアマネジメントの依頼を受けてご利用者宅を初めて訪問するところからはじまり、サービス担当者会議の場面やモニタリング、ご利用者が入退院となる場面や住宅改修、施設入所などのケースごとに演者さん(皆さんケアマネジャーのかた)がケアマネ役、本人役、家族役などを演じていくというもの。
そして間にグループワークを挟んでいくというもの。
2時間半程度のセミナーでした。
やらされてる感満載の寸劇
ケアマネ協会の会員さんが行う寸劇ですので、もちろん最初から内容に期待はしていません。
皆さん演劇のプロではありませんので、いくらセリフが棒読みであってもそれをどうこう言うつもりはありません。
ですが、皆さん
表情が暗い!
嫌々やっているオーラが伝わってくるんですよ。
「やりたくないけど、やれって言われたからやらなきゃ。やだな」という声が聞こえてきそうです。
やるほうもつらいでしょうが、見せられるほうはもっとつらいです。
さらに極め付きは…
マスク!!
劇に必要な小道具でも何でもなしに、寸劇中にマスク。
考えてみてください。小学校の学芸会だって、マスクして壇上に上がる児童はいないですよね。
劇は見てもらってなんぼなのに、自ら顔隠すなんて。
寸劇の質は期待してなかったけど、せめて寸劇に臨む最低限の姿勢は見せてほしかったです。
何の思いも込められていないやらされてる感満載の寸劇は、トータル30分ほど披露されました。
小手先の話ばかりのグループワーク
グループワークでは各グループにひとり担当ファシリテーターがつき、ファシリテーターの進行で話が進んでいきました。
前もって準備されていたファシリテーターのカンペに基づいて進められていったため、グループディスカッションは盛り上がらず、ファシリテーター主体の一方的な情報伝達に終始しました。
「参加者皆様からのひとつひとつの質問に丁寧にお答えいたします」
といううたい文句はどこへいったのやら…
話の内容ですが、具体的には、
『初回訪問のときにもって行くものの話』
『入退院時連携シートのフォーマットの話』
『個別支援計画書を事業所に依頼したことを議事録に載せとくといいよっていう話』
『介護認定の情報開示申請の仕方』
『住宅改修の申請の仕方』
などなど
役所的な事務手続きの話に終始。
つまりは小手先な話でした。
「このケアマネジャーってどっち向いて仕事してるんだろう」てのが感想です。
まず向けるべきベクトルを、行政でも自分自身でもなく、利用者へ向けるところからではないでしょうか。
小手先なことは、ケアマネじゃなくてもできます。
事務処理なんて、これからはAIに任せてしまえばいいのです。
「本当にケアマネに求められていることは、そこじゃない」という思いを抱えながら、悶々としたセミナーは終了したのでした。
あるべきビギナーズセミナーの姿
ベクトルを利用者へ向けよう!
ビギナーケアマネは、細々した事務手続きに手いっぱいで日々の業務に翻弄されているのでしょう。
それはわかります。
また、ケアマネは基本的にはひとりひとり独立して利用者、家族と関わりますので、孤独に陥りやすく、「忙しい自分をみんな理解して!」というモードになりやすいこともわかります。
ビギナーケアマネが『事務手続きに翻弄されて困っている』、『忙しい自分を理解してほしい』ということは、事実です。
だからといってビギナーケアマネの意向を、『事務手続きのやり方を知りたい』、『お互いの傷をなめ合う』というように、そっくりそのままビギナーケアマネのニーズとしてセミナーに落としこんでしまっては、それはただの御用聞きセミナーと呼ばれても仕方ないのではないでしょうか。
ケアマネが利用者の意向からニーズを引き出すときと同じように、ビギナーから発せられた希望と真のニーズが一致していない場合は、正しい方向に向けることが、セミナー主催者である先輩ケアマネのあるべき姿なのではないでしょうか。
ケアマネの専門性を考えたときに、目的は利用者の自立支援なわけです。
そうであれば、まず第一にセミナーの軸となるべきものは例えば『自立支援を実現するための具体的なノウハウ』というような項目になっていくはずです。
利用者を主にして考え、参加者が意図していなくても正しい方向性に導いてくれるようなセミナーを期待しています!
ケアマネの本質を語ろう!
先にも述べましたが、近いうちに介護業界にもAIが入ってくるでしょう。
ケアマネに取って代わってAIが行える仕事。それは、本質的にケアマネでなくてもできる仕事ということです。
つまり、事務処理はケアマネジャーの仕事の本質ではないということです。
もっと、理念やビジョンを共有していくことでケアマネの中身を鍛えていかないと、今までと同じように、中身のないケアマネの量産を続けることになってしまいます。
AIが行えない本当の意味でのケアマネの専門性、ケアマネにしか提供できない価値についてディスカッションすることで、ケアマネの本質的な価値を高めていくことができるのではないでしょうか。
協会の皆さま、そんなセミナーを期待しています!