認知症を題材にした本は数あれど、実際に認知症の人が認知症について語った本はそうそうありません。しかも、その著者があの認知症医療の第一人者、長谷川和夫先生だったら…
これはもう、読まない理由がありません。
わたくしtakuma(@takuma3104 )は、デイサービスの生活相談員をしています。
デイサービスに通ってこられる方の大半は、認知症の人です。
認知症の方々とふだんから関わっている中で、どうしても「認知症の人の視点」より「介護者側の視点」で関わってしまうことが多いように感じています。
そんなわたしのように、認知症当事者の視点から認知症についての理解を深めたい人にぴったりの本です。
過去に長谷川先生は、病院の先輩から
「あなた自身が同じ病気にならないかぎり、あなたの研究は本物じゃない、認めない」
と言われたことがあるそうです。
長年認知症に向き合ってこられた長谷川先生が認知症となり、当事者として認知症をどう感じているのか、どうとらえているのか、非常に興味深い内容です。
この本の第1章、「認知症になったボク」には、認知症と診断されてセカンドオピニオンとして長谷川先生を訪れた男性のエピソードが書かれています。
とても考えさせられるエピソードです。
仮にわたしが今、認知症と診断されたとしても、それは受け入れられるものではないと思います。
この男性のように、相当な葛藤があると思うんです。
じつは、自分は認知症なんですよ」といえる社会であることが大事です。
長谷川先生は、ご自身が認知症になっても、それを隠すことなく公表されました。
認知症であることをさげすんだり、恥ずかしいと思わせてしまったりする社会であってほしくはありません。
認知症であってもありのままを受け入れてもらえる社会を目指し、それを身をもって体現された長谷川先生。
生き様を感じます。
正直言って、今の社会は認知症の人がじゅうぶんに受け入れられている社会じゃないと、わたしは思います。
だから、社会が変わっていく必要があるんだなって思います。
認知症の人にやさしい社会にしていくことは、認知症でない人にとっても、つまりすべての人にやさしい社会になることです。
そんな長谷川先生の思いが詰まった、言うなれば「生命のバトン」のようなこの一冊。
その思いを、ぜひ受け取ってみてください。
takuma
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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