思い込みで話をしない
小島さんは長井さんの話を十分聴かずに、「お客さんに声をかけていない」と勝手に思い込んで話をすすめてしまいました。
そのため、長井さんは、「自分の相談に乗ってもらっている」と感じ取ることができず、悩みも解決しませんでした。
小島さんの助言はあくまでも小島さんの勝手な思い込みであり、その助言が長井さんに当てはまるとは限りません。
この小島さんのように、長井さん自身の話を聴かず小島さんの思い込みで話をしてしまうのは、相談の乗り方としてNGです。
同じ「営業」の悩みであっても、長井さんが思っている悩みと長井さんが思っている悩みはちがうものですから、それぞれ個別に考えるべきなのです。
それを、同じ「営業」の問題として一般化して扱うと、相談者はいい気持ちがしません。
このときの長井さんの気持ちは、きっとこうだったでしょう。
「先輩の悩みとオレの悩みを一緒にするな。」
相手と自分はちがう
人は自分の常識、自分の経験、自分の価値観などといった自分の物差しで、無意識のうちに相手を図ってしまいます。
しかし先自分の常識、経験、価値観などは結局のところ、自分だけの思い込みです。
自分と相手はちがう人間なわけですから、自分が思っているのと同じように、相手が思っているわけではありません。
相談に乗る行為は、相手のためにすることです。
ですから相談に乗るためには、自分と相手はちがうということをまず認識しなければなりません。
相手と自分の違いを認識するためできることは、まず相手の話を聴くことです。
小島さんは、長井さんの話を十分聴いていなかったため、思い込みでアドバイスをしてしまったのです。
もっと、何に困っているのかなど悩みの詳細を具体的に聴いていたら、適切なアドバイスができたはずです。
たとえ同じ「営業」というカテゴリーの悩みであっても、その中身は千差万別です。
似通った悩みであっても、ひとつとして同じ悩みはありません。
「相手はきっとこう思っているだろう」という思い込みで話をせず、ひとりの個人として相手の考えを汲み取っていくことが大切です。
レッテルを貼らない
人は知らず知らずのうちに、他人にレッテルを貼ってしまいます。
たとえば、「B型は自己中心的」、「介護職員はやさしい」、「関西人はおもしろい」、などのように、世の中には一般的と思われているイメージがあります。
「おとなしい人は営業が苦手」というレッテルも、そのうちのひとつです。
先ほどの会話の中で、小島さんは「おとなしい人は営業が苦手」というレッテルを長井さんに貼ってしまいました。
当然ですが、B型の人がすべて自己中心的なわけでもなく、すべての関西人が面白いわけでもありません。
それと同じように、おとなしい人がすべて営業が苦手なわけではありません。
おとなしくても営業が得意な人はいますし、おしゃべりでも営業が苦手な人はいます。
世の中には固定観念というものがあり、意識しないとその考え方に引きずられてしまうものです。
一般的にはそういわれているけど、この人はこの人。この人にも当てはまるとは限りません。
安易にレッテルを貼らず、この人はどうなのかをきちんと理解することが必要になります。