相手に焦点を当てる
そうはいっても相手にレッテルを貼らないというのはけっこう難しいです。
相談に乗る側はやってしまいがちです。
わたしも、認知症のデイサービスご利用者の方とお話ししたときに、「認知症の高齢者に趣味なんかないだろう」という思い込みから、「趣味は何でし”た”か?」という過去形で質問をしてしまったことがあります。
つまり、わたしには「認知症の高齢者=趣味なんてあるわけがない」という思い込みがあり、それが無意識のうちの言葉に出てしまったのです。
また、なまじ経験を積んでいると、「ふんふん、この相談はこういうパターンだな」と先読みしてしまいます。
たとえば、「生活保護を受けているひとり暮らしで身寄りもない人」から相談を受ける場合、過去に自分が経験した「生活保護」「ひとり暮らし」「身寄りがない」という人と接したイメージをその人にも当てはめてしまうというわけです。
「こういうパターンだからこの前みたいにこう対応すればいいんだ」と考えてしまうことで、肝心のその人自身を見失ってしまうということがあります。
あくまでもその人はその人であり、パターン化することはできないのですが、相手を型に当てはめてとらえてしまうこともあります。
レッテルを貼ったりパターン化することで支援する側はやりやすくなるかもしれませんが、相手の気持ちは置いてけぼりになってしまいます。
カメラで写真を撮るときに、他のものに焦点が合ってしまうと、撮りたいものに焦点が合わずにぼやけて写ってしまいます。
レッテルやイメージに惑わされず、きちんとその人自身に焦点を当てて相談に乗ることで、その人自身を見失わずにすみます。
相談相手にはオーダーメイド品を渡す
人は、自分の悩みをその他大勢の悩みと一緒にされることを嫌います。
たとえ似たような悩みはあったとしても、その人の悩みはその人自身のオリジナルな悩みです。
ですから、相談はその人に合わせたオーダーメイドでなければなりません。
衣料品店で既製品の洋服を売るかのように相談に乗るわけにはいかないのです。
面倒でもその人がどんな洋服を求めているのか確認し、その人のために採寸して作り上げていかなければならないのです。
万が一自分の中にその人へのオーダーメイドの用意がなく、既製品の洋服しかなかったとしても、その既製品の服に合うポケットチーフやネックレスなどをちょい足ししてお渡ししてみましょう。
つまり、相手に合わせて伝えようとすることで、たとえ一般論しか持ち合わせていなくても、相手はオーダーメイド感を感じることができます。