「障害者」と「経済学」
相反するふたつの分野が交わるとき、思いもよらぬ科学反応が生まれます。
この本は、経済学者であり、脳性マヒの子どもの父親でもある中島 隆信さんが、「障害者問題」について書いた本です。
新版 障害者の経済学 [ 中島 隆信 ]障害者問題を経済学からの切り口で、善寄りでも悪寄りでもなく、客観的な視点から書かれています。
わたくしtakuma(@takuma3104 )としては、「面白い切り口の本だなぁ」と思って、読みすすめることができました。
ともすれば特別なものとしてみられやすい「障害者問題」を、経済学の視点から語ることで、「一般的な話」に落とし込んでいるところが、他の本にはない面白さ。
ちょっと視点を変えて障害者問題について考えてみたいって人におすすめの一冊です。
ただしかし!
正直ちょっとわかりにくい内容も含まれています。
「ガバナンス」や「インセンティブ」など、あまり聞き慣れない専門用語も一部使われているので、読んでいてわかりにくい部分があることは否めません。
それでも、「わたしたちの社会は“社会的弱者”と共生ができるか?」という、優性思想についての問いに対して、
優性思想はあえて持つものでもないし、また克服するものでもない。人間の置かれた状況によって知らないうちに自然に出てくるもの。それに共感する意見があったとしても、私たちの社会に“社会的弱者”と共生できるだけの経済的そして精神的余裕があれば、魔物を封じ込めておくことができる。
という経済学的な見地からの考察は秀逸です。
なるほどそういう見方があるのだなぁと、考えさせられました。
他にも、
福祉サービスという画一化された〝杖〟の存在によって、障害者が実際にどのようなニーズを持っているかはきわめて見えにくくなっているのである。
障害者は品行方正な“いい人”でなければならず、また素直かつ純真でなければならない。そして、常に障害にめげず“頑張っている”ことが求められる。こうした印象を維持することで、世間から弱者として扱ってもらえるのである。
随所にキラーフレーズ満載。
思わずハッとさせられる気付きを得られる本です。
takuma
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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