まずは、タイトルがとても堅苦しくなってしまったことを謝罪します(笑)
タイトルの通り、今回のテーマは相談援助技術についてです。
相談援助技術って聞くだけで、とっつきにくさがあることは百も承知です(笑)
もしちょっとでも興味があれば、読んでいただけると嬉しいです。
初回面接での出来事
先日、ケアマネジャーからの依頼を受けて、介護サービスの利用を希望されていらっしゃる方のところにお邪魔したときのことです。
はじめてお会いしたその女性はAさん。
若年性認知症を患っていました。
そのため、意思疎通が困難で会話が続きません。
同席してくださったご主人からのお話によると、日中はいつも家でボーっとしている、とのことでした。
介護サービスご利用のために必要な情報収集のため、わたしはお話を伺っていました。
身体状況についての確認が取れたので、普段の生活の様子についてお話を伺おうとしたとき、
わたしはつい、こんな言葉を発してしまいました。
「Aさんって、趣味は何でしたか?」
…失敗しました。
おそらく表情には出なかったと思いますが、内心は「やっちまった」という気持ちでいっぱいでした。
「趣味は何でしたか?」発言を深掘りしてみた
「Aさんて、趣味は何でしたか?」
という質問の裏にある私の気持ちはこうです。
「今のAさんに趣味なんてないだろうけど、昔はどんな趣味があったのだろう?」
つまり、若年性認知症である今のAさんに趣味なんてないだろう、という先入観を持って
「Aさんて、(今はないけど昔はあったであろう)趣味は何でしたか?」
という気持ちを込めた質問をしてしまったのです。
ふつうだったら、
「Aさんって、趣味は何ですか?」
と尋ねるはずですが、
わたしは無意識のうちに
「意思疎通のできない若年性認知症のAさんに趣味なんてないだろう」
という意思表示をしてしまったのです。
ラベリング効果
心理学の言葉で、ラベリング効果というものがあります。
ラベリング効果とは
「あなたって○○よね」
とラベルを貼ってしまうと、相手に
「わたしって○○なんだ」
と思わせてしまうことをいいます。
つまりわたしが
「趣味は何でしたか?」
と過去形で聞いてしまったことで、Aさんに対して無意識のうちに
「今のわたしには趣味がない」
と思わせてしまう効果があるのです。
初めて会う人に対して、趣味はないという先入観を持って接してしまったこと。
これは、支援者としてよろしくない対応でした。
確証バイアス
また、
「この人はこういう人」
と決めつけてしまうことは、確証バイアスという心理作用が起きます。
確証バイアスとは、Aさんのケースでいうと
「認知症の人に趣味なんてない」
というような固定観念にとらわれてしまい、実際に全ての人がそうとは限らないのに、その人を自分の思ったようにとらえてしまったことを指します。
他に、例えば
「髪を染めている人は不良だ」
とか
「血液型がO型の人は大雑把だ」
などのように、実際にはそうでなかったとしても、相手のことを自分が思ったようにとらえてしまいます。
そしてその結果、相手のことを誤って理解してしまうことをいいます。
ラベリング効果と確証バイアスが生み出すもの
相手に対しての思い込みは、相手にとってラベリング効果を生み出し、自分にとっては確証バイアスを生み出してしまいます。
相手を自分の都合のいいようにとらえてしまうことは、その人本来の個人としての姿をとらえられなくなってしまうのです。
そう!
思い込みは、バイスティック7原則のひとつ、個別化を阻害してしまうのです!
相談援助の過程で、「この人はこういう人かもしれない」と、自身の経験からアタリをつけて面接することはアリかもしれません。
しかし「こういう人はこうだろう」と、自身の思い込みによってその人を判断することはナシです。
その人を個別化することを阻害してしまうからです。
「一般的にはこう。だからこの人もこう」
という発想ではなく
「一般的にはこう。だけどこの人はこう」
という発想が必要なのですね。
まとめ
今回の失敗で、わたしは個別化という相談援助技術の基礎について、再認識することができました。
やはり何事も、基礎が大事だと考えさせられました。
そして、ラベリング効果と確証バイアスについては、その人をどうとらえるかによって相手も自分も大きな影響を受けてしまうものである、ということが理解できました。
「先入観に縛られずに柔軟な対応を行っていきたい」
と自戒した次第であります。